Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なんとうたん

南島譚

中島 敦

Leggi 南島譚 (なんとうたん) di Nakajima Atsushi (中島 敦) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7401 caratteri · 15 schermate

Aozora Bunko

火花のように、雷光のように、毒のある花粉のように、嶮しい悪意の微粒子が家中に散乱した。貞淑な妻を裏切った不信な夫は奸悪な海蛇だ。海鼠の腹から生れた怪物だ。腐木に湧く毒茸。正覚坊の排泄物。黴の中で一番下劣な奴。下痢をした猿。羽の抜けた禿翡翠。他処からモゴルに来たあの女ときたら、淫乱な牝豚だ。母を知らない家無し女だ。歯に毒をもったヤウス魚。兇悪な大蜥蜴。海の底の吸血魔。残忍なタマカイ魚。そして、自分は、その猛魚に足を喰切られた哀れな優しい牝蛸だ。…………

余りの烈しさ騒々しさに、夫は耳が聾したように茫然としていた。一時は、自分がすっかり無感覚になったような気がした。対策を考える暇などは無いのである。怒鳴り疲れた妻が一寸息を切って椰子水に咽喉を潤おす段になって、やっと、今迄盛んに空中に撒き散らされた罵詈が綿の木の棘の様にチクチクと彼の皮膚を刺すのを感じた。

習慣は我々の王者である。この様な目に会いながら、妻の絶対専制に慣れたギラ・コシサンはまだア・バイのリメイの許に逃げ出す決心がつかないでいた。彼は唯哀願して只管に宥恕を請うばかりである。

狂乱と暴風の一昼夜の後、漸く和解が成立した。