Classici giapponesi con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate
金を盗もうと盗むまいと、それとておれには風馬牛だ。ところで少納言の鼓だが、たとえ名器であるにしても、一旦賊の手に渡ったからは、いわば不浄を経て来たものだ。伝家の宝とすることは出来ぬ。なあ千三屋、そんなものではないか」
「へい、そんなものでございましょうな」
「と云ってお前へ譲ることは出来ぬ」
「え、どうでもいけませんかな」
「ただしおれには不用の品だ。捨てるによって拾うがよい」
鼓をひょいと地へ置くと、ギーと潜り戸を押し開き、銀之丞は入って行った。
もう夜は明けに近かった。その明け近い江戸の夜の、静かな夜気を驚かせて、またも鼓が鳴り出したのは、それから間もなくのことであった。ポンポンポンポンと江戸市中を、町から町へと伝わって行った。
弟を呼ぶ兄の声
追分油屋掛け行燈に
浮気ご免と書いちゃない
清涼とした追分節が、へさきの方から聞こえて来た。
ここは外海の九十九里ヶ浜で、おりから秋の日暮れ時、天末を染めた夕筒が、浪平かな海に映り、物寂しい景色であったが、一隻の帆船が銚子港へ向かって、駸々として駛っていた。
その帆船のへさきにたたずみ、遙かに海上を眺めながら、追分を唄っている水夫があった。