Classici giapponesi con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate
そうでなければ苦しむばかりだ。
「いっそ自分が立ち去ったなら、万事平和に納まろうが、この女ばかりは放されぬ」これが甚内の心持ちであった。「天下の金は自分の物だ。金には何んの苦労もない。有難いことには自分は美貌だ。これまでほとんど至る所で、色々の女を征服もし、また女に征服もされた。女の秘密もおおかたは知った。与し易いは女である。しかるに意外にも意外の土地で、意外の女とでっくわした。類例のない女である。だから自分には珍らしい。珍らしいものはほかへはやれぬ。是非征服しなければならない。ではどうしたらよかろうか? 女の心を引きつけている、不思議な追分の歌い手を、永遠にお北から遠避けなければならない。そのほかには手段はない」
これが甚内の心持ちであった。「よしそうだ、やっつけよう!」
冷えた盃を取り上げると、つと唇へ持って行った。
河鹿の鳴く音は益※(二の字点、1-2-22)冴え、夏とはいっても二千尺の高地、夜気が冷え冷えと身にしみて来た。
「お北、それではまたあおう」
「おあいしたいものでございます」
「すぐにあえる、待っているがいい」
「早くお帰りくださいまし」