Classici giapponesi con furigana
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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
Leggi 名娼満月 (めいしょうまんげつ) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.840 caratteri · 37 schermate
満月の愛嬌笑いは、いつの間にか淋しい、冷めたい笑顔に変っていた。二人の前で駒下駄を心持ち横に倒おして、土をはねかけるような恰好をしたと思うと、銀の鈴を振るようなスッキリとした声で、
「男の恥を知んなんし」
とタッタ一言。白い腮を三日月のように反向けて、眉一つ動かさず。見返りもせずに、裲襠の背中をクルリと見せながら、シャナリシャナリと人垣の間を遠ざかって行った。あとから続く三味太鼓の音。漂い残す蘭麝のかおり。
「……満月……満月……」
と囁やき交しながら雪崩れ傾いて行く人雑沓の塵埃いきれ……。
その中に両手の穢れを払いながら立上った二人の顔は、もう人間の表情ではなかった。墓の下からこの世を呪いに出て来た屍鬼の形相であった。血の気のない顔に生汗を滴らせ、白い唇をわななかせつつ互いの顔を睨み合って、肩で呼吸をするばかりであった。
「……こ……これが見返さいでいられましょうか」
千六の両眼から涙がハラハラと溢れ落ちた。
「……こ……これ程の挨拶……か……刀の手前にも……捨てて……おかれぬわい。ええっ……」
銀之丞の美しい眼尻には涙どころか、血が鈍染んでいた。二人は思わず互いの両手を固く握り合っていた。