Classici giapponesi con furigana
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わし
和紙
東野辺 薫
Leggi 和紙 (わし) di 東野辺 薫 (とうのべかおる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 35.557 caratteri · 70 schermate
数日ならずして生死を越えた門出をしようとする人が、その厳しい現実とは、およそ遠い思いあぐんだ表情で天井を仰いでいるのを、産褥のとしゑは何ともそぐわない気持で眺めやった。ネリなどはどうともよしに委せておけばいいのである。物も手につかぬ戸惑いの中に一家の者がそわそわしているのに、神経の鈍さと言おうか、一向召集令を手にした者らしいあわただしさの見えない義兄が、慊らなくさえ思われた。惣吉の応召を知った時の、わなわなと顫える昂奮は無論なかったが、友太の居なくなることが無闇に頼りなく、絶えず膝がしらを揺すられる落着きなさにとしゑはかり立てられていた。
次の日、挨拶廻りに出かける友太が、制服の袖を通しながらどうしたや? と勝子を覗き込むのへ、としゑは言ってみた。
「兄さんは……寂しくないんですの?」
何でや? と訊かれると、ちょっと言葉に詰まるのだった。昨夜も晩くまでよしと話し合ったことである。友太の年齢では、村の人々は大てい妻子を残しての出征で、でなかったら約束の女がいるとかであるはずなのを、全く女の手に触れることさえなく再度の応召をする友太が、そんなのは若い女の傍からのつまらぬ感傷だと言われればそれまででも、やはり心寂しいものに思いやらずにはいられなかった。