Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぜんぞうをおもう

善蔵を思う

太宰 治

Leggi 善蔵を思う (ぜんぞうをおもう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.041 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

おおやさんの家族をも、私は正確に知っている。爺さんと、息子と、息子の嫁と、孫が一人である。こんな不潔な、人ずれした女なぞは、いない筈である。私がこの三鷹に引越して来て、まだ四日しか経っていないのだから何も知るまいと、多寡をくくって出鱈目を言っているのに違いない。服装からしていい加減だ。よごれの無い印半纏に、藤色の伊達巻をきちんと締め、手拭いを姉さん被りにして、紺の手甲に紺の脚絆、真新しい草鞋、刺子の肌着、どうにも、余りに完璧であった。芝居に出て来るような、頗る概念的な百姓風俗である。贋物に違いない。極めて悪質の押売りである。その態度、音声に、おろかな媚さえ感ぜられ、実に胸くそが悪かった。けれども私にはその者を叱咤し、追いかえすことが出来なかったのである。

「それは、御苦労さまでした。薔薇を拝見しましょうね。」と自分でも、おや、と思ったほど叮嚀な言葉が出てしまって、見こまれたのが、不運なのだという無力な、だるい諦めも感ぜられ、いまは仕方なく立ち上り、無理な微笑さえ浮べて縁側に出たのである。私も、いやらしく弱くて、人を、とがめることが出来ないのである。