Classici giapponesi con furigana
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よっかのあやめ
四日のあやめ
山本 周五郎
Leggi 四日のあやめ (よっかのあやめ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.200 caratteri · 38 schermate
彼は妻を殴らなかったことを後悔し、まだむずむずする右手の拳を左の掌へ力まかせに叩きつけた。「女め」と彼は呟いた。暗い庭のついそこに、若木の桃の咲いているのがぼんやりと見えた。それは千世の愛している木である。そばにこごめ桜や、ゆすら梅や、やはり若木の八重桜がある。それらも千世が実家から移したり、よそから貰ったりして植えたものであった。――主税介は腰脇差を抜いて、桃の木のほうへ近よっていった。
明くる朝、――千世は庭を見て声をあげた。庭にはまだ靄が薄く残っている時刻だったが、自分の愛している桃やゆすら梅や八重桜などが、さんざんに枝を払われ、根から切り倒されていた。湿った黒い土の上に散乱した花枝や、こぼれた桃の葩を見ると、千世ははだしでそこへとびだしてゆき、「誰がこんなことを」と云いながら、僅かに花の残っている桃の枝を拾おうとした。しかし彼女は伸ばした手を途中で止めて、はっとしたように立ちあがり、それからまた跼んで、その枝を拾いあげた。
「あの方だわ、あの方だわ」千世は云った。眼からぽろぽろ涙がこぼれた、「ひどい、あんまりだわ」
千世は衝動的に立ちあがり、良人の居間の縁先から(足の汚れたまま)あがって、その部屋の障子をあけた。