Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうふ

坑夫

夏目 漱石

Leggi 坑夫 (こうふ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.690 caratteri · 283 schermate

Aozora Bunko

すると今までただの山であったものが、ただの山でなくなる。ただの土であったものがただの土でなくなる。青いばかりと思った空が、青いだけでは済まなくなる。この病院の、この診察場の、この薬品の、この臭いまでが夢のような不思議になる。元来この椅子に腰を掛けている本人からしてが、何物だかほとんど要領を得ない。本人以外の世界は明瞭に見えるだけで、どんな意味のある世界かさっぱり見当がつかない。自分は、診察場と薬局とをかねたこの一室の椅子に倚って、敷物と、洋卓と、薬瓶と、窓と、窓の外の山とを見廻した。もっとも明瞭な視覚で見廻したが、すべてがただ一幅の画と見えるだけで、その他には何物をも認める事ができなかった。

そこへ戸を開けて、医者があらわれた。その顔を見ると、やっぱり坑夫の類型である。黒のモーニングに縞の洋袴を着て、襟の外へ顎を突き出して、

「御前か、健康診断をして貰うのは」

と云った。この語勢には、馬に対しても、犬に対しても、是非腹の内で云うべきほどの敬意が籠っていた。

「ええ」

と自分は椅子を離れた。

「職業は何だ」

「職業って別に何にもないんです」

「職業がない。じゃ、今まで何をして生きていたのか」