Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Leggi 夏の葬列 (なつのそうれつ) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 60.161 caratteri · 122 schermate

Aozora Bunko

もちろん靴の底は宙に浮いているが、もうしめたものだ。居睡りをしコックリしても、全身の力を抜いても、周囲にびっしりつまった人びとがいやでもぼくを支える。ムッとする人いきれにはせめて鼻の穴を天井に向けるのが関の山で、密集した人間たちの不断の圧迫で顔の向きを変えることはおろか、ろくに身動きさえできなかったが、同じ理由から、寒気もしのびこめない。……一口でいえば、それはぼくにとって、もっとも安楽な客車だった。

――一度など、ぼくの着ていた父のお古の外套に、婦人用の赤革のガマグチがはいっていた。もちろん内身はからっぽだったが、二宮の駅を出て何気なくポケットに手を入れ、それを発見したときの不思議なお伽噺じみた快感と驚愕とを、ぼくはいまだに忘れることができない。スリの御用ずみの贓品をひそかに所持していることに、ぼくは共犯者のそれのような、あの疚しげなスリルと、秘密の悪事に荷担する奇怪な歓びをおぼえたのだ。……だから、ぼくはだれにもそれを知られないよう、そっと一週間ほどそれをポケットの中であたためつづけてから、その感動がからっぽになったあくる日、一人でコッソリとそれを海へ棄てた。