Classici giapponesi con furigana
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ゆうもやのなか
夕靄の中
山本 周五郎
Leggi 夕靄の中 (ゆうもやのなか) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9522 caratteri · 19 schermate
それから阿迦桶の水を、墓標の前の(死んだ仏の使っていたらしい)茶碗に注いだ。これらのことを、彼は黙って、放心したように、脇から眺めていた。
「すっかり覚えが悪くなってしまいまして」老女は会釈をして云う、「失礼でございますが、初めてお眼にかかるのでございましょうか」
「ええ、……そうです、たぶん」
「わたくしおいねの母でございます、このたびはお店の皆さまに、いろいろと御厄介をおかけ致しまして……」
彼女はくどくど礼を云う。あの男はさっきの場所にはいない、だがあの眠そうな眼は、こっちを見まもっている。飽くことなく、じっと、どこかついその辺から。……彼はうなだれて、無気力に溜息をつき、ふところの手をだらっと下げる。
このあいだに、老女の声は少しずつ変ってきた。それがふと途切れて、なにかを探るような眩しそうな眼で、彼を見あげた。
「あのう、こんなことをお訊ねしては、失礼かもしれませんが、もしや貴方は、……あの繁二郎さんと仰しゃるのではございませんか」
彼はどきりとする。すぐには返辞ができない。ええと口ごもるのを、老女は自分の思いどおりに受け取った。
「お手代の繁二郎さまでございますのね」