Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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よるのちょう

夜の蝶

山本 周五郎

Leggi 夜の蝶 (よるのちょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.345 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

と呼ばれている。

そのほかに二人、一人は初めて見る顔で、旅の者らしい、手甲脚絆に草鞋をはき、合羽を着て、頭に塵よけの手拭をかぶっている。年はもう三十六、七、これは鍋前に掛けて、主人の与平とぼつぼつ話しながら、焼き蛤を肴にゆっくりと飲んでいた。

もう一人は、――これは飯台の端に酔いつぶれている。酔いつぶれているのだろう、腰掛から落ちそうな恰好で、飯台に俯伏し、だらしなく曲げた腕に顔をのせたまま動かない。垢じみた布子(木綿の綿入れ)によれよれの三尺をしめ、頭の毛は灰色だし、伸びている無精髭も灰色で、ぜんたいが云いようもなくみじめにうらぶれていた。

「待っておくれ、高次、どこへゆくの」

外でそういう女の声がした。葭簀張りのうしろのほうらしい。「どこへゆくのよう」といい、そのまま聞えなくなった。

「旦那はこれから旅へいらっしゃるんですか」主人の与平が燗徳利を出しながら訊いた。「それとも旅からお帰りになったんですか」

「帰って来たんだが」とその客は少し上方訛りのある言葉で云った。「どうやら、またでかけなければならないようだ」

「この御近所ですか」

「いや、――」

客は口ごもった。