Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
人を見ると、直ちに自分の利益になる人間かどうかを直覚して、それから人を世話するのが久左衛門の悪癖だと、隣人からそんな批評を浴びせられているのも私は知らぬこともない。参右衛門が私たちに冷淡な様子を示すのも、久左衛門への礼儀もあるであろうが、反感もこれでないとは限らない。しかし、人を見て、打算に終る人物としてみても、久左衛門は少し私は違っていると思っている。彼の打算は彼自身の生活の律法で、その神聖さを彼とて容易に犯すことは出来ぬ。しかし、久左衛門にとっては愛情はまた律法とは自ら別物に感じているところがある。用談の際の駈け引き、応対の寛容、瞬時に損得を見極めたリズムある美しい要点の受け応え、不鮮明な認識の流れはそのまま横に流して朦朧たらしめる訥弁で、適度の要領ある次ぎの展開の緒を掴む鋭敏な探索力など、彼の政治力は数字と離れて成り立たないものだ。それも緩急自在な芸術性さえ備えている。その稀な計算力の才腕には、たしかに天才的なところがあって、周囲のものにはただ打算に見えるだけの抜きん出た悲劇性さえ持っている。
「おれの悪口をみなは云うが、おれが死ねば何もかも分る。