Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
九月――日
夜の明けない前に、清江の刈って来た真直ぐな萱の束を、小牛と小山羊が喰っている。強烈な匂いを放った刈草の解けた束に朝日が射し込み、獣の口の中へ、鋭くめり入る折れた葉の青さ。云いがたい新鮮さで歯を洗う草の露。――堆肥の上から湯気が立ち、その間から見える穂を垂れた稲の大群の見事さ。家の周囲をめぐっている水音。青柿の葉裏にちらちら揺れる水面の照り返し。台所には、里芋の葉で一ぴきの赤えいが伏せてある。
霽れたかと思うと海の方から降って来る。蓑を着て庭掃除をしている農婦。あなごやえいの籠を背負い、栗の木のある峠を降りてくる漁婦の姿。これらが雨の中で、米と交換の売買をしている魚籠を、一人二人と集り覗く農婦の輪。もうどこも米がなくなって来ているので、がっかりした漁婦は私たちの縁側へ廻って来て、最後に魚籠をひろげた。
「銭でもええわのう。糸があれば、なおええが。」と悲しそうな声で漁婦はいう。
私たちは、あなごや赤えいを買い入れ、それを持って汽車で鶴岡の街まで出て、そこの親戚から交換で青物を貰って来るのだ。ここでは村と街とが反対の土産物だが、それほど金銭では野菜の入手が困難だ。