Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
広い仏壇の間では、宵に清江の摘み終えた紫蘇の葉が、縮れた窪みにまだ水気を溜めて青青と匂っている。
私は眠れぬので幾度も起きて雨雲を見た。ますます暗くなるばかりの雲の迅さ、黒い速度のような鈍い唸りをあげて通る風に背を向け、炉端にひとり坐っていると、いつか読んだ、「生まのままの真は、偽せよりも偽せだ。」というヴァレリイの言葉がふと泛んで来た。何という激しい爆裂弾だろうか。いよいよ来るぞと私は思った。何が来るのか分らぬながら、とにかく来ると思って、焔を見ながら坐っていた。
生まのままの真は偽せよりも偽せだ。(ヴァレリイ)――この言葉はたしかに高級な真実である。しかし、この高級さに達するためには、どれほど多くの嘘を僕らは云い、また、多くの人の真実らしいその嘘を、真実と思わねばならぬか計り知れぬ。それにしても、ヴァレリイは死んだと聞く。真偽は分らぬが、風の便りだ。嘘だと良いが。
九月――日
暴風で竹林が叫び、杉木立が風穴をほって捻じまがっている。山肌が裏葉をひんめくらせて右に左に揺れ動き、密雲の垂れ込んだ平野の稲は最後の叫びをあげている。頭が重く痛い。牛のもうもう鳴きつづけているのが警笛のようだ。