Classici giapponesi con furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Leggi 夜光虫 (やこうちゅう) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 66.871 caratteri · 134 schermate
その名前を記憶の中に入れて、小沢は四ツ辻までひきかえした。
そして、そこから二丁ばかり東へ行くと、友人の家があった。
「伊部恭助」
稍左肩下りの、癖のある、しかし達筆の字で書かれた標札を見た途端、小沢は、
「そうだ、伊部の奴は高等学校の時から変った字を書いていたっけ」
と、久しく会わぬ旧友を、しかも復員後はじめて会う知人として訪ねる――というなつかしさがこみ上げて来て、
「――ここは焼けないで良かった」
と、喜びながら、玄関の戸をあけると、三足の男の靴が脱ぎ捨ててあった。
それをちらと眼に入れながら、案内を請うと、奥から出て来た若い娘が、
「あら。小沢さん」
小沢の顔を見て、耳の附根まで赧くなった。
三年振りだったが、さすがにその娘の顔には見覚えがあった。
額が広く奥眼で、鼻筋が通っているところなど、兄の伊部恭助にそっくりだったから、妹の道子だと、すぐ判り、
「やア、暫く……」
小沢は以前この家を訪ねて来た時と、同じ調子の声を出しながら、しかし、めずらしく赧くなってしまった。
三年前に見た時はまだ女学校へ通っていたのに、今はすっかり娘めいて、スカートの裾から覗いているむっちりした膝頭を気にしているのを見て、思わずはっと赧くなったのだろうか。