Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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よなきてっこつ

夜泣き鉄骨

海野 十三

Leggi 夜泣き鉄骨 (よなきてっこつ) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.273 caratteri · 31 schermate

Aozora Bunko

「何を見てるんだ」わしは、訊いた。

「マッチは無いのかね」と彼は云った。

3

合宿の門を出ると、溝くさい露路に、夕方の、気ぜわしい人の往来があった。初夏とは云っても、遅れた梅雨の、湿りがトップリ、長坂塀に浸みこんで、そこを毎日通っている工場街の人々の心を、いよいよ重くして行った。

道では、逢う誰彼が、挨拶をして行った。

向うから、見覚えのある若い女が、小さい風呂敷包みを抱えてやってきた。

「お前さん」と其の女は、わしの連れを、チラリと睨みながら、云った。「これから、何処へゆくんだい」

「お前こそ、どこへ行くんだい」

「ふン、見れば判るじゃないか。今夜は、徹夜作業があるんだよ」

「夜業か。まァしっかり、やんねえ」

「お前さんの方は、どこへ行くのさァ」その女は、一歩近よって、云った。

「ちょいと、この仁と、用達しに」

「そうかい、あのネ」女は、口を、わしの耳に近づけて、連れに聞かせたくない言葉を囁いた。

「……」わしは、黙って、肯いた。

女に別れると、後から、附いてくる横瀬がわしに声をかけた。

「今の若いひとは、なかなか、美い女ですネ」

「そうかね」

「何て名前です」