Classici giapponesi con furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Leggi 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) di 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.647 caratteri · 215 schermate
堂内はひっそりしていて、私以外には拝観者もいなかった。紫衣をまとった一人の老僧が、厨子にはたきをかけていたが、ぼんやり立っている私を見て、壇の上にあがってもいいという。私ははじめて多くの古仏を、その背後から触るるばかりに眺めることが出来た。聖観音の背から胴体にかけてのなめらかな美しさは、指でさわるとそこがはじけそうに思われるほど如実であった。嘗つて光悦作と伝えらるる船橋蒔絵硯筥をみたときも、私はそれを指で押してみたい誘惑を禁じえなかった。あの漆黒のふっくらともりあがった硯筥が羊羹のように柔くへこむ、その触感をためしてみたかったのであるが、いまもそうであった。木彫のくすんだ色彩は生身の肉体を感じさせる。そして永遠の沈黙がある。
老僧は壇の上をゆっくり歩みながら、私に色々説明してくれるのである。私は自分を囲む古代の像に茫然としているのみだった。ふいに老僧は、「汝の敵もまた汝の恩人であると申しましてな」と言い出した。老僧は玉虫の厨子に描かれた「捨身飼虎図」を指さしているのだった。その言葉が私の心をときめかした。私の敵は私の恩人であったろうか。何が私をいまこの御堂へひきよせているのだろうか。