Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいどうじしんすけのはんせい

大導寺信輔の半生

芥川 竜之介

Leggi 大導寺信輔の半生 (だいどうじしんすけのはんせい) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.611 caratteri · 26 schermate

Aozora Bunko

それでもまだ金の足りない時には巧みに両親の歓心を買い、翌月の小遣いを捲き上げようとした。就中彼に甘かった老年の母に媚びようとした。勿論彼には彼自身の嘘も両親の嘘のように不快だった。しかし彼は嘘をついた。大胆に狡猾に嘘をついた。それは彼には何よりも先に必要だったのに違いなかった。が、同時に又病的な愉快を、――何か神を殺すのに似た愉快を与えたのにも違いなかった。彼は確かにこの点だけは不良少年に接近していた。彼の「自ら欺かざるの記」はその最後の一枚にこう言う数行を残している。――

「独歩は恋を恋すと言へり。予は憎悪を憎悪せんとす。貧困に対する、虚偽に対する、あらゆる憎悪を憎悪せんとす。……」

これは信輔の衷情だった。彼はいつか貧困に対する憎悪そのものをも憎んでいた。こう言う二重に輪を描いた憎悪は二十前の彼を苦しめつづけた。尤も多少の幸福は彼にも全然ない訣ではなかった。彼は試験の度ごとに三番か四番の成績を占めた。又或下級の美少年は求めずとも彼に愛を示した。しかしそれ等も信輔には曇天を洩れる日の光だった。憎悪はどう言う感情よりも彼の心を圧していた。のみならずいつか彼の心へ消し難い痕跡を残していた。