Classici giapponesi con furigana
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だいどうじしんすけのはんせい
大導寺信輔の半生
Leggi 大導寺信輔の半生 (だいどうじしんすけのはんせい) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.611 caratteri · 26 schermate
机は古いのを買ったものの、上へ張った緑色の羅紗も、銀色に光った抽斗の金具も一見小綺麗に出来上っていた。が、実は羅紗も薄いし、抽斗も素直にあいたことはなかった。これは彼の机よりも彼の家の象徴だった。体裁だけはいつも繕わなければならぬ彼の家の生活の象徴だった。………
信輔はこの貧困を憎んだ。いや、今もなお当時の憎悪は彼の心の奥底に消し難い反響を残している。彼は本を買われなかった。夏期学校へも行かれなかった。新らしい外套も着られなかった。が、彼の友だちはいずれもそれ等を受用していた。彼は彼等を羨んだ。時には彼等を妬みさえした。しかしその嫉妬や羨望を自認することは肯じなかった。それは彼等の才能を軽蔑している為だった。けれども貧困に対する憎悪は少しもその為に変らなかった。彼は古畳を、薄暗いランプを、蔦の画の剥げかかった唐紙を、――あらゆる家庭の見すぼらしさを憎んだ。が、それはまだ好かった。彼は只見すぼらしさの為に彼を生んだ両親を憎んだ。殊に彼よりも背の低い、頭の禿げた父を憎んだ。父は度たび学校の保証人会議に出席した。信輔は彼の友だちの前にこう言う父を見ることを恥じた。