Classici giapponesi con furigana
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おおしまができるはなし
大島が出来る話
菊池 寛
Leggi 大島が出来る話 (おおしまができるはなし) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9856 caratteri · 20 schermate
そして、夫人は母たる愛情を、七人の子供に平等に領けて居た。譲吉はまだ十六にしかならない令嬢の雪子さんや、十一になったばかりの瑠璃子さんが、夫人の死の為めに受くる愛情生活の破産を考えると、自分の悲しみなどは恥しいほど、小さいものだと思わずには居られなかった。
六本木の停留場で降り、龍土町の近藤氏の家の方へ歩いて居る時には、譲吉の涙は忘れたように、乾いて居た。
譲吉は、一家が涙で以って、濡れ切って居る所へ、自分一人涙無しに行くのは何となく気が咎めた。夫かと云って一旦出なくなった涙は、意識しては何うしても出なかった。
が、近藤家の勝手を知った譲吉が、内玄関を上って、夫人の居間であった八畳へ行くと、其処には思い掛なく夫人の代りに、主人の近藤氏が羽織袴で坐って居た。譲吉は悔みの挨拶をしようとしたが急に発作的に起った嗚咽の為に彼は、暫くは何うしても、言葉が出なかった。譲吉は、自分の過度のセンチメンタリティが、一種誇張の外観を、呈しはせぬかと思うと、可なり不快であった。彼は出来る丈け早く自分の感情を抑制しようと思ったが、不思議に彼の嗚咽は続いた。而も、その嗚咽は不思議に、深い感情を伴って居ない軽い発作で、而も余りに大げさな外観を持って居た。