Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
あんな動物に芸術がわかってたまるものか。
そこへ行くと鼠の方がどのくらい可愛ゆいか知れやしない。気の毒そうに、おどおどして人間の物を荒しに来るあのいじらしさ。あの眼つきをごらん、鼠のいたずらを歯がみをして憎がるものでも、あの眼を見た日には、誰も可愛がらずにはいられまい。
しかし図々しい奴はどこまでも図々しく、箸にも、棒にも、かからない奴は、どうも仕方がないもので、さしもの茂太郎の心の中で、これほどの憎しみと、軽蔑を受けながら、いったん、姿を隠したと思った猫が、ぬけぬけと茂太郎の前へ姿をあらわして来て、例の柔媚な、むずむずとした形で、主人の鼻息をうかがいながら、火の傍へ近より、とうとう、そこに、いい心持でうずくまってしまいました。
見れば猫のうちでも、最もたちの悪い老猫だ。
「ははあ、それでは猫、お前にも、わたしの芸術がわかるかい」
茂太郎はその図々しさに呆れ返って、さてまた、寥亮として、清にして且つ悲なる蘆管を取って、海風に向って思う存分に吹きすさびました。
猫は眼をつぶって、それを聞いている。彼の芸術に心酔するようなふりを見せて、その実、たんまりと、焚火の温まりを貪っている狡猾なる策略。