Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
弁信は今、その他のものに盲目にして、心の人としてのお銀様を見ることに親切でありました。
弁信の前にのみ、傷つけられざるお銀様の、少女としての、処女としての、大家の令嬢としての品性が、美しくえがき出さるることがあるのであります。弁信のみが、彼女の僻めるすべての性格を忘れて、本然の、春のように融和な、妙麗なお銀様の本色を知ることができるらしくあります。
しかし、ひとたび、物に触れて彼女が、その怖るべき瞋恚の一念に駆られて、満身の呪詛を吐き出し来る時には、さすがの弁信といえども、それに一指を加えることができません。その時はひとり悄然として離れて、その炎の燃えて、燃えて、燃え尽きる時を待つの態度に出づるほかはありませんでした。
多分、今晩もそうしたような場合から、弁信はひとり曠野をさまようて、空しく毀たれたる性格の、呪いの、若き女人のために、無限の同情を寄せているゆえんでありましょう。
こうして、行き行く間に、一つの穏かならぬ事体を、弁信が感得しました。
行手の、ほとんど十数町を隔てたと覚しいところあたりにおいて、烈しい空気の動揺を弁信が感得しました。
普通の人の耳で聞き、普通の人の眼で見ては、何の気配もないことも、この人の心耳にはありありと異常が感得せらるること、今に始まった例ではありません。