Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

Leggi 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 368.567 caratteri · 720 schermate

Aozora Bunko

「あんまり、いい景色だものですから、寒いことも忘れてしまいました」

「そうかなあ、そんなによい景色ですか」

「ええ、それはそれは」

「景色はいいが、今晩はなんだか宿が物さわがしいではないか」

「いいえ……」

お雪が解せないと思いました。事実、今晩の宿といって特にさわがしいことはありはしない。自分の気のついている限りでは、いつもの通りの冬籠りの宿に何の出入りもない、空気の動揺もない、と信じていましたのに、この人はこんなことを言う。そこで、

「いいえ、騒がしいことは少しもございません、いつもの通り、ほんとに静かな山間でございます、静かになればなるほど、夜の景色が何とも言われません」

「でも、なんとなく物騒がしい晩だ」

「いいえ、やっぱり静かな晩でございますわ」

「そうかなあ」

その時、竜之助の深くさし込んだ左の腕が、お雪の乳房の首まで届きました。お雪でなければ、まあ、くすぐったいと、はしゃいで振りもぎるところでしょう。お雪は、最初から圧迫的な空気を、如何ともすることができないで、ほとんど、二人が重なり合って立ちながら、夜の景色に見とれているような形です。亜字の欄に立ちながら二人は、じっと身動きもしないでいたが、お雪の動悸が、高ぶってゆくことは眼に見えるようです。