Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Leggi 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 268.946 caratteri · 520 schermate

Aozora Bunko

思い切って自分の口にあてがってグッと呑み込み、

「…………」

その口をお雪ちゃんの口にあてがって、グイグイと注ぎ込みました。普通の場合に於てこういうことはできないのです。普通の場合でなくとも、米友でなければ、こういうことを為し得ない。為し得たとしても、後に相当の誤解と羞恥とを拭い去れないものが残る憂いはあるが、今の米友には、そんなことはてんで心頭にはありません。

口移しに水を注ぎ込んだが、無論その注ぎ込んだ水の全部がお雪ちゃんの咽喉を通ろうとは思われないのですが、しかし本人も、この昏迷きわまる状態のうちにありながら、たしかに水を呑まんと欲する意識だけは動いていると見え、米友の口移しにした水の三分の二ぐらいは唇頭から溢れて、頬と頸へ伝わって流れ去るのですけれども、三分の一程度は口中へ入るのです。そうして、そのまた幾分かが口中に残り、幾分かが咽喉を通り得るものと見なければなりません。

米友は誰に憚ることもなく、また憚る必要もなく、二度も三度もその給水作業を試みました。水が通じたというよりも、米友の神が通じたのでしょう、たしかに見直した、もうこっちのものだ――という希望の光が、米友の意気を壮んにしました。