Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Leggi 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 268.946 caratteri · 520 schermate

Aozora Bunko

「新月」を好くお銀様は当然、「満月」というものを好かないのです。好くとか好かないとかいう純美淡泊なる感情も、この人に宿る時は、好きは溺愛となり、好かぬは憎悪とまで進んで行き易いことは、当然の行き方でありました。

そこで、お銀様が新月が好きだという時は、全心をつくして好きになり、満月が好かない! という漠然たる感情が、満月は嫌いだ! という憎悪となり、やがて、満月の高慢が好かない、人が月見の何のともてはやすことが憎い――ということにまで進んで、そうして、その反動が新月を好きになることに加わって行くのです。

お銀様は今、新月の宵を、ひとり歩んで行くことの満足と快感とを感ずると共に、誇りに似たものをさえ思い浮べてきました。そうして、いつもこういう時に、念頭に上って来るのは、唐詩の

繊々初月上鴉黄

という句なのであります。これは、あながちお銀様に限ったというわけのものではなく、誰しも唐詩を知るほどのものにして、新月を見た最初の感情として、まずこの句を思い浮べないものはないでしょう。

繊々たる初月、鴉黄に上る

初月は即ち新月であって、その文字の選び方に於て、少しも原意を損ずることはないのみならず、繊々たるという畳語のほかに、初月そのものを形容する漢字はないといってもよいくらいです。