Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Leggi 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 268.946 caratteri · 520 schermate
と対比して、その悩みを悩む人の数こそ少ないが、その性質に至っては、持たぬ者の悩みより遥かに深刻なものがないとは言えない。持たぬ者の悩みは、お仲間が最大多数であって、同情の分量もまたそれに比例して大きいが、持てる者の悩みは、その共鳴者が少ないだけ、理解者も、同情者も、少ないと言わなければならないのです。
伊太夫は、陰密の間に、その悩みに虐げられて来ましたが、それと共に、この悩みは悩みではない、自分は持てるが故に長者であり、他の羨望の的となっている強味の点ばかりが自分を刺戟していて、未だ曾て自らその持てる物のために悩まされているのだとも、虐げられているのだとも信じたくはないのですが、事実上、自分の持てるものが、自分とその家族に、解放も与えず、愉悦も恵まず、平和も安心も来たさないで、かえってその重荷が年毎に加わって行く、その圧力だけは感じないわけにゆきません。
それが偶然、与八という男を見ると、全く別な世界の人を見出さないわけにはゆきませんでした。無一物の旅から旅の中に、なお安心があり、平和があり、受くるよりも与うることに幸福を感ずる天然自然の悠々たる余裕がある――ああいう生活方法もあり得る、現にあり得ているという驚異を、持たせられざるを得ませんでした。