Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Leggi 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 268.946 caratteri · 520 schermate
かくて、見えつ隠れつして行くうちに、ついに人間としてのお銀様の姿が次第次第に竜蛇に変って行くのではないかと疑われ出してきました。
今や、憎らしいほど真黒く蟠っていた、山容雄偉なる胆吹山の形も全く見えなくなりました。見えるものは、雲と、霧と、その雲と霧の中を清らかな鈴の音と、それから、ひらりひらり閃めく竜蛇の面影――
自分は山登りは慣れないと言ったお銀様の身の軽いこと――そうして、絶えずそれに引摺られて行く気分のわたし、それでも山へ登る気持はしないで、濡れない海の中を深く潜り入るような感じが不思議です。
「お雪さん――疲れましたか」
「いいえ」
「早くいらっしゃい、あなたに見せて上げるものがありますから」
「何でございますか」
「足もとを見てごらんなさい、いろいろな花が咲いておりますよ」
「まあ――」
なるほど、足もとを見ると――あるにはあるがお雪ちゃんが悸っとしました。
点々として、到るところに、花といえば花が咲いていることは間違いはないが、その花のまた何という毒々しい色、ドス黒くて、いやに底光りのする、血といえばいえるが、しかも人間の温かい血という感じさえない、魚類の冷たい悪血――そうして葉の捲き方から節根までがいちいちひねくれている。