Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Leggi 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.601 caratteri · 387 schermate
「お礼なんぞ、飛んでもないことでございます」
お玉はそれを受けようとしなかったが、今こうして簪を一本、自分にくれようとして差出した人の姿を見ると、今の先、薄情呼ばわりをして怖い人、いやな人、呪わしい人と一途にムカムカとしてきたその人の影に、可憐しいものが見え出して来るのでありました。それは物をくれるから好い人に見え、くれないからどうというような心ではなく、真底のどこにか人の情の温か味というものがこの冷たい人の血肉の間にも潜んでいて、それが一本の簪を伝うて流れるそのしおらしさがお玉の胸を突いて、なんということなしにお玉は歔欷りあげるほどに動かされてしまったのでありました。そうしてみると、盲目になったこの薄情な人、杖も柱もなく置かれて行くこの冷たい人が憎らしくて、そうしてかわいそうであります。
「どうも有難うございます」
「泣いているのか」
「泣けてしまいました、つい、泣けてしまいました」
「なに……何が悲しい」
「なにかしら悲しくてなりませぬ」
「別に悲しいこともなかろうものを」
「御免下さいまし」
お玉は、よよとしてそこへ泣き倒れてしまいました。
泣いて泣いて、暫らくは口が利けませんでした。