Classici giapponesi con furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Leggi 契りきぬ (ちぎりきぬ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.757 caratteri · 66 schermate
――いまにお客が黙っちゃいないよ。
酔いつぶれているとき聞いたおてつの言葉は、おなつの心を突きとおした。
――これからが自分のたたかいだ、いざとなれば死ねばいいんだ。
こう思ってやって来た。そうして百日あまりはともかくきりぬけて来たのであるが、そのたたかいは常に一方的であった。一夜一夜を凌ぐのに、おなつは身も心もくたくたにしなければならない、しかも同じ夜が同じような夜に続くのである。
「そうだ、このままでは済まないだろう」
おなつは口の中で呟いた。
「いまにこのままでは済まないときが来るだろう」
外には梅雨のような雨が降っていた。午さがりのひっそりとした時刻で、湯から帰ったお菊とおそのという二人が、なにか食べながらむだ話をしていた。――おなつは雨にけぶる空を眺めた。窓さきの吊り忍草が濡れてあざやかに葉を伸ばしている。
「七両二分だってさ、ほんとだよ」
「あらいやだ、七両二分てえば人の女房となにしたとき……まあいやだ、かあさんたら、ははははは」
「なにがいやさ、洒落てるじゃないか」
こう云っているのはお菊であった。
「つまりこうなの、北原さんくらい堅いひとをくどきおとすとすればよ、そのひとをねとるのと同じ値打があるっていうのよ」