Classici giapponesi con furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Leggi 契りきぬ (ちぎりきぬ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.757 caratteri · 66 schermate
それから二三日して衣巻たちが来た。
昏れがたまで晴れていたのが、暗くなってまもなく雷が鳴りだし、いっとき気持のいい夕立が来た。それがあがるかと思ったのが、少し弱くなったまま地雨になり、宵を過ぎてもやむけしきがなかった。――衣巻たちはその雨の中をやって来たのである。宴会のくずれとみえ、松岡町の『八十八』という料亭の印いりの傘を持っていた。かれらが座敷へおさまってから、おなつは朋輩のなみという女をとらえ、簾戸の外までいって、どれが北原という人かときいた。
「そらあれが衣巻さん、あんた衣巻さんは知ってんでしょ、あの肥った人、その右が今村さん、ええいま扇子を持ってる人、その隣りが北原さんよ、平気な顔でにやにやしてるでしょ、いつもあのとおりなの、――あら、どうかして」
「いいえなんでもない、なんでもないわよ、わかったわ」
「あんたお座敷どうするの、出ないの」
「ええあとでゆくわ、今ちょっと」
おなつは廊下を自分たちの部屋のほうへと戻った。心はひどく動揺していた、――ふしぎだ、慥かに似ている、正二郎さまの幼な顔にそっくりだ。部屋へはいると、おなつは崩れるようにそこへ坐り、暗い壁のひとつところを惘然と見まもった。