Classici giapponesi con furigana
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おくのうみ
奥の海
久生 十蘭
Leggi 奥の海 (おくのうみ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.005 caratteri · 26 schermate
父は物臭で、なにひとつ娘たちに身の立つようなこともしてくれなかったが、一人々々が古沼の淀みから出て、幸福になることを、心から願っているので、世間で評判しているような、金穀でむすめを売り沽かすなどということはなかった。
こんどの縁談は父も祝福してくれたが、あなたが息を切らしながら米を運んで来るので、あいつめも、つまらぬうわさを信じているのだとみえると、ひどくがっかりしていた。
私どもは貧苦の世界に住み馴れ、どうあろうと、食の道などは、ものの数でもなかったのに、あなたは一年先の扶持米まで借りだし、代渡し手形に裏判をつき、二度の食をつめ、水を飲んでまでいたわってくださるのだが、その親切が重石になり、あるにあられぬ思いがした。
食うものがなければ、水を飲めといってくれればいいので、苦労を分けあうこそ、夫婦というものなのではなかろうか。
あの夜、切に、おそばへ帰りたくて、長屋の出窓の下をいくたびか往復し、おしずまりになるのを待っていたが、朝まで行灯のそばに坐っていられたので、そのため、とうとう帰りそびれてしまった。云々とある。
私は犬でもねこでもないのだから、糧で飼われているのでは、いかにも空しい気がする、という意味なのであった。