Classici giapponesi con furigana
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おんなぐつのあと
女靴の跡
宮本 百合子
Leggi 女靴の跡 (おんなぐつのあと) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1954 caratteri · 4 schermate
こごんでそれを眺め、私は覚えず息をつめた。
おおこれは一つの小さい銃口であった。生きながら埋められた生命が無限の思いを惻々と息づいている口である。目をとめたものは思わず心を動かされ、その訴えることの深い可憐なる銃口を撫でずにはいられない。ひとりでの力につき動かされてしている自分の振舞いに心付いて、私は幾千の手がこの忘れること難い金色の口に触れたかを思った。生きて強壮な人々は、平和のための会議を何故風光明媚なジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の湖畔でだけ開くのであろう。
やがてそろそろ薄闇の這いよって来た砲台の裏からまわって、傍のいら草の中に錆びた空罐などの散っている急な小径を下って来た。すると、今朝の霜でゆるんだまま夜にとざされようとしている赤土に、まことに瀟洒な女靴の踵のあとがくっきりと一つ印されているのが目にのこった。そしてそれは何故か私の額の上に刻まれたもののような印象を与えて今日に及んでいるのである。
〔一九三七年十一月〕