Classici giapponesi con furigana
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このみのうつりかわり
好みの移り変り
山本 周五郎
Leggi 好みの移り変り (このみのうつりかわり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2592 caratteri · 6 schermate
幾つかの大皿に肉と具を盛ったのが並び、熱した鍋で脂が焼けはじめると、嗅覚に先んじて視覚がたじたじとなった。これではならぬと眼をそらし、水割りを呷って神経を騙しにかかったが、いよいよ鍋の物が煮えだすなり、砂糖と醤油と肉と入り混った、こってりとした匂いがあたりに充満し、風上もへちまもなく、私の胃袋はたちまち窒息しそうになった。私はさりげなく他の座敷へ逃亡し、チーズとセロリーを噛みながら水割りを啜り、そして自分自身に云いきかせたものだ。「これはなにかの心理的誘因などじゃあない、口の好みが変ったのだ、つまり、乳ばなれのようなものに相違ない」
しかし肉類が嫌いになったのではない。牛肉でもシチューとかローストとか、ハッシュにすれば好んで喰べるし、少量ならステーキも喰べる。ベーコン・エッグ、ハム・エッグは手作りで喰べるくらいだし、チーズは輸入される殆んどの種類のどれかを毎日欠かしたことがない。
海苔と卵と味噌汁で朝めしとか、湯豆腐と刺身と甘煮で晩めし、などということも私にはまだできない。どうしてもローストかシチューか、白身の魚ならグラタンぐらいがないときげんがよくないのである。