Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

Leggi 子を奪う (こをうばう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.292 caratteri · 80 schermate

Aozora Bunko

合さりがちな眼瞼をうっとりと開いて、はいって来た彼の顔を見上げた。淡い安らかな視線だった。然し彼はその頭を撫でてやろうという気も起らなかった。離れているとあんなに気に懸ったのが、眼の前にその姿を見ると、もう手を出す気も起らなかった。触るのが憚られるようだった。彼は自ら変な気持ちになった。その気持ちを掘り進んでゆくと、敏子へ余り拘泥しすぎてることに気付いた。……彼は敏子の顔を眺めた。敏子は落ち付き払って、それでも遠慮がちに、幾代や兼子と短い言葉を交わしていた。

「では、もう寝んだら宜しいでしょう。依子が眠そうだから。」と幾代はやがて云った。

「はい。」と敏子は答えた。そして子供の上に屈み込んで云った。「寝んねしましょうね。」

奥の六畳に床が敷いてあった。

皆が立って行った後に、彼は一人腕を組んで坐っていた。やがて縁側の雨戸を一枚開いて、庭へ下りていった。冷たい夜の空気が額を撫でた。空を仰ぐと細かな糠雨が、殆んど分らない位に少し落ちていた。植込みの影が魔物のように蹲っていた。何処からか射してくる淡い光りに、楓の若葉がほんのりと見えていた。彼は吸いさしの煙草をやけに地面へ叩きつけた。