Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate

Aozora Bunko

と鼻で云った。

半助の脇からとらが顔を出し、六ちゃんを見て、大きく口をあけた。ないたのであろうが、やはり声は出ず、そのまま半助のうしろへ引込んだ。

「さて、――」

半助はそう云い、指で鼻の脇を撫でた。すると、それが別れを示す協定の合図であるかのように、六ちゃんは帽子をかぶり、片手を振って戸口からはなれた。

「ありがとよ」半助はそう云った、「おっかさんによろしくってな」

六ちゃんは黙ってろじを出ていった。

夜になり、寝る支度をしたあとで、母親のおくにさんは六ちゃんと二人、仏壇の前に坐る。仏壇には燈明がともり、線香の煙がゆれている。おくにさんが小さな団扇太鼓を手に持つと、六ちゃんがまず両手を突いておじぎをし、母親のためにお願いをする。

「なんみょうれんぎょう」彼は合掌し、あたかも仏壇の中におそっさま自身がいるかのような、純粋なしたしみと、信念のこもった表情で呼びかける、「――どうかまいどのことでうるさいかもしれないが、どうかかあちゃんの頭がしっかりするように、よろしくお願いいたします、なんみようれんぎょう」

それからおくにさんがお題目をとなえ、団扇太鼓を叩きだすと、六ちゃんがまたおじぎをし、仏壇に向って云った。