Classici giapponesi con furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate
「あたしは間違ってたかもしれないね」死ぬまえにおるいさんは亭主にそういった、「――一日一円の貯金は一家の繁栄って、貯金のない家には将来なし、なんていうことを信用してたのよ」
「いまでもそんなポスターが貼ってあるよ」と慶三はなぐさめた、「新聞にも貯金しろって広告や、えらい人たちの談話が出てるよ、おまえは間違ってなんかいなかった、大丈夫だから安心しなよ」
「たとえなにか考え違いをしていたにしろ」とおるいさんはいった、「あたしだって人間だものね、そうなにからなにまで知ってるってわけにはいかないじゃないの」
「おまえはよくやったよ、なにも考え違いなんかしやしなかった、大丈夫だよ」
おるいさんは亭主のいうことを聞いていないようであった。そして死ぬ瞬間まで意識がはっきりしていた証拠には、彼女がそれまで大事に清潔状態を保ってきた、足駄だとか膳、椀、割箸その他の器物類が、どうなるかという心配で頭がいっぱいのようであった。
「ええ、ほんとにもういい女房でしたよ」通夜のとき慶三は、集まってくれた近所の人たちにいった、「うまい物を喰べたがるじゃなし、着物を欲しがるわけじゃなし、いっしょになってから芝居ひとつ見たいともいわず、はたらきどおしにはたらいて、倹約、倹約とつましくやってくれました、ええ」