Classici giapponesi con furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate
辰弥はびっくりしたように眼をみひらいた。たんば老人はそっと眼を細めた。
「世間にはよくそういうことがあるんだな」と老人は太息をついてから、やわらかな声で云った、「あとになってから、あのときああしてやればよかったと、悔むようなことが誰にでもある、それがまた、人間の人間らしいところではあるだろうがね」
たんば老人はタバコをすおうかすうまいかと迷うように、みれんらしくキセルと空き罐とを見比べた。
辰弥は家へ帰った。たんば老人の話は、彼に一種のショックを与えたようだ。それがどういう内容のものであるか明瞭ではないけれども、辰弥の顔には急に、幾歳かとしをとった男のような表情があらわれていたし、あるく足どりにも、つねにない力がこもっていた。
「そうだな、それもあるな」
と彼は考えぶかそうに呟いた。
「あにきにはあにきの云い分があるだろう、戦争ちゅう親たちからはなされ、遠い田舎で疎開ぐらしをしていた」
ことによると父や母が、敵の爆弾で死ぬかもしれない、そのときはどうしたらいいか。そういう心配が頭から去るときはなかったにちがいない、それから敗戦になり、家へ帰ると父が死んだ。