Classici giapponesi con furigana
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うかのちょうじゃものがたり
宇賀長者物語
田中 貢太郎
Leggi 宇賀長者物語 (うかのちょうじゃものがたり) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9427 caratteri · 19 schermate
それは祈祷が済むや済まずに引っ込んで往って、二度と顔を見せない長者の女のこの比の素振からでありました。彼は折おり老人の詞に対して、とんちんかんな返事をしました。
そのうちに老人が一人起ち二人起ちして、一人も姿を見せないようになりました。修験者はそっと起って奥の座敷の方へ往きました。それは女に逢うためでありました。
女は己の室でつくねんと坐って何か考えごとをしておりました。修験者のそっと入って往く跫音がしますと、女は顔をあげました。女の眼は魚のように冷たく光っておりました。
「老人に見られては困ります、帰ってください」と女が云いました。
「何故そんなことを云います、あなたは何か私に憤っておりますか」
「何も憤ることはありませんが、こんなことが父さんに知れたら大変ではありませんか」
「どうせ一度は知れることではありませんか」
「私は厭」と、女は叱るように云いました。
修験者は淋しそうな顔をして立っておりました。
「さ、早う帰ってください、何人か来ると困りますから」
「もう私が厭になりましたな」と、修験者は強いて穏やかな声で云いました。
女は黙って戸外の方を見ました。