Classici giapponesi con furigana
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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
Leggi 安吾の新日本地理 (あんごのしんにほんちり) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.350 caratteri · 39 schermate
すると彼は、たぶん、と私が予期していたように、しかし甚ださりげなく、また慎しみを失わずに、あの人の名を言いだした。
「あゝ。あの人なら、知ってるよ。たぶん、横手のあたりに生れた人だろう」
私は何食わぬ顔で、そう云ってやった。むろん私はその記者に腹を立てるところなどミジンもなかった。私はこの土地であの人の名をハッキリ耳にきくことによって、十年前に死んだ、その人と対座している機会を得たような感傷にひたった。着いたトタンにいきなり新聞記者が訪ねて来たことも、そしていきなりあの人の名をきいてしまったことも、私とこの土地に吹く風だけが知り合っている秘密のエニシであるということをひそかに考えてみることなどを愉しんだのである。
街へ散歩にでたら、百貨店の飾り窓に甚しく私の気に入ったステッキがあった。秋田産のカバハリというステッキだった。その店内にたった一本あるだけのステッキでもあった。すべてそれらのことがなんとなく私を満足させ、落付かせた。
秋田市では別に目的もないので、なんとなく本屋だの裏町だのをブラブラ歩いただけである。旅館で食べたショッツル鍋が、さすがに東京の秋田料理屋で食べるものよりも美味であった。