Classici giapponesi con furigana
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かれい
家霊
岡本 かの子
Leggi 家霊 (かれい) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9395 caratteri · 19 schermate
気まり悪くなったのを押し包んで老人は「また、この鏨の刃尖の使い方には陰と陽とあってな――」と工人らしい自負の態度を取戻す。牡丹は牡丹の妖艶ないのち、唐獅子の豪宕ないのちをこの二つの刃触りの使い方で刻み出す技術の話にかかった。そして、この芸によって生きたものを硬い板金の上へ産み出して来る過程の如何に味のあるものか、老人は身振りを増して、滴るものの甘さを啜るとろりとした眼付きをして語った。それは工人自身だけの娯しみに淫したものであって、店の者はうんざりした。だがそういうことのあとで店の者はこの辺が切り上がらせどきと思って
「じゃまあ、今夜だけ届けます。帰って待っといでなさい」
と言って老人を送り出してから表戸を卸す。
ある夜も、風の吹く晩であった。夜番の拍子木が過ぎ、店の者は表戸を卸して湯に出かけた。そのあとを見済ましでもしたかのように、老人は、そっと潜り戸を開けて入って来た。
老人は娘のいる窓に向って坐った。広い座敷で窓一つに向った老人の上にもしばらく、手持無沙汰な深夜の時が流れる。老人は今夜は決意に充ちた、しおしおとした表情になった。
「若いうちから、このどじょうというものはわしの虫が好くのだった。