Classici giapponesi con furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 207.099 caratteri · 419 schermate
それきりで私は二度と会って話をした事はない。ただその後に一度駿河台の家へ何かの演奏会の切符をもらいに行った事がある。その時は今の深田博士が玄関へ出て来て切符を渡してくれた事を覚えている。これも恥ずかしい事である。その家の門の表札にはラファエル・フォン・コウィベルとしてあった。
全く夢のようである。
言葉がもう少し自由であったなら、そして自分がもし文科の学生ででもあったら、私はおそらく、もう少しケーベルさんに接近する機会が多かったかもしれない。
ケーベルさんがなくなった時に私は昔の事を思い出してせめて葬式にでも出たいような心持ちがした。しかしやっぱりそうしないほうがいいと思ってやめてしまった。どこへ見舞い状を出す先もないと思う事がさびしかった。
自分のような、みずから求めて世間に義理を欠いて孤独な生活を送りながら、それでいて悟りきれずに苦しんでいるあわれな人間にとっては、ケーベルさんのような人が、どこかの領事館の一室にこもったきりで読書と思索にふけっているという考えだけでもどんなに大きな慰藉であったかしれないと思う。その人がもうこの世にいないと思うのは、なんだか少しさびしい。