Classici giapponesi con furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Leggi 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) di 正岡 容 (まさおかいるる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 163.270 caratteri · 325 schermate
「……」
昨夜みんなのあとへつづいてしどろもどろに誦んだ般若心経を、早く覚え込んでしまわなければならない。
「エヘン」
誰にともなく咳払いした。そうして目の前のお経文へと目をやった。
「観自……観自……在菩薩」
読みかけてまた、
「観自……観自……観自観自」
あとの観自は、ことさらに二つ重ねていった。
かんじ……かんじ……観自ではなく、かん治。宗十頭巾に十徳姿、顎鬚白い、好々爺然とした落語家仲間のお稽古番、桂かん治爺さんの姿が、ヒョロヒョロと目の前に見えてきた。
「いけない」
あわてて次郎吉は、首を振った。俗念を払おうとしたのだった。
「観自在菩薩、深般若波羅蜜多を行ずる時、五薀皆空なりと照見して……」
急いでここまで読み下して、素早くさらに次の言葉へと読み移った。
「一切の……一切の苦厄……苦厄……」
九百九十の寺々に、きのう剃ったも今道心……苦厄という言葉がそのまま九百へ連想を走らせてきた。おととい剃ったも今道心、ただ道心では分り申さぬ、と同時にこんな張りのある訥弁の声いろが、あとから耳許へ聞こえてきた、木の葉の合方、山嵐や谺の鳴物も聞こえてきた、扇で半面隠して一生懸命声張り上げている小勝師匠の高座姿さえマザマザとして見えてきたのだった。