Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しょうせつのタネ

小説のタネ

吉川 英治

Leggi 小説のタネ (しょうせつのタネ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.376 caratteri · 23 schermate

Aozora Bunko

つまり仏典でいう末那識の境になるんですね。まあ、白昼夢でしょうな、それで救われてましたがね。やがて、そのドックで落ちて一ヵ月余入院しましたが、その時、いよいよ退院の日は淋しい気がしましたよ。なぜかって、入院中、ベッドでの空想をあんなに愉しめたことはなかったからです。ちッとも退屈しなかった。そういう空想ぐせは、今日もまだ続いていますね。

戦時中なんかも、殊に僕はそれで救われたな。終戦近い時に、忘れもしない、神田の駿河台辺で、空襲警報が鳴り、右往左往、人影も無くなっちゃった。空にはB29の巨体が見える。夢中で町の横丁の防空壕へ駈け込んだ。防空壕の入口に残雪があったのでまだ二月頃だったでしょう。ふるえながら、中のムシロにちぢまっていた。長いんだなあ、解除になるのが。だが、そんなときも、空想に遊んでましたね。幾つもの俳句が出来たりしたね。句は忘れましたが、そんなときも、僕はすぐそっちへ自分を持って行けるたちなんですよ。自然、恐さも忘れるんです。

大体、作家というものは、みんなそういうものを持ってるんじゃない? つまり、西鶴が世之介をつかって、渡し舟に乗り合せて隣り合った女の肉体を、空想の中で完全に自分のものとして味得してしまう、ああいうものを持ってると思うな。