Classici giapponesi con furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Leggi 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) di 尾崎 士郎 (おざきしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.032 caratteri · 216 schermate
慌てて高射砲が八方からうちあげられたが、飛行機の爆音はそのまま深くとざした雲の中へ吸いこまれていった。
空が曇っているせいか、一人でじっとしていると、味気ない佗しさが胸一ぱいにひろがってくる。おそらく此処にいる邦人のひとり残らずが何時死んでもいいというだけの覚悟は心の底ふかくひそめているであろう。しかし、それにもかかわらず、この狭苦しい生活の中で、こちんと心にふたをしたような独善的な感情だけが一日ごとに目立ってくる。これが生活につき纏う影のようなものだと思うと無精に腹が立ってくるのだ。そのことを今日も相川と二人で語りあった。
「それは、われわれの生活の中からヒロイックな要素が失われているからだ、此処にいると、唯、一日一日を無事にすごせばいいという気に圧しつけられる、――われわれの眼光にちらついているものは何時だって監視兵たちの顔色なのだ、祖国の同胞が英雄的な昂奮に胸を躍らせているときに、おれたちは、沸りたつ感情を噛み殺して生きねばならぬ、あの監視兵の横っ面を思う存分ひっぱたいてやろうという気持に駆りたてられながら、慌てて自分を宥めたりすかしたりする、そんなことを日に何十ぺんとなく繰返しているうちに何時の間にか、いびつに歪んだ鋳型のようなものが出来てしまうのだ」