Classici giapponesi con furigana
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さんがくじょうど
山岳浄土
中村 清太郎
Leggi 山岳浄土 (さんがくじょうど) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4724 caratteri · 10 schermate
ころげこんだが、提灯をたよりに谷むこうの堂のような湯小屋にはいると暖かい煙がもうもうとこめ、柘榴口めいた巨材をくぐった湯槽には油とまがう湯があふれて、狂おしいまではやる気をこころよくしずめてくれた。
あくる日はまた、熊の血を犬のようにかぎまわる猟夫とつれだち、無名の峠から白峯をあおいで巨大な心臓をこおらしたような北岳のすがたにふるえあがった。ひとりくだる雨畑の谷は昼もくらく、こずえにのこる柿をしるべの山村は化石したように動かない、ひとり昼夜にさめているのは峰の雪だ。容易に応じない村びとをたのんで幾日かののちようやく笊ガ岳に登れたが、蝋を流したような氷の岩角にすがり、凍ったガレにかんじきをすべらしてあやうく助かり、手袋をたらしたような石楠花から偃松の枝をつかんだときは瞼があつくなった。
頂上三角櫓の残骸が一本足を寒天に冲するところ、悪沢、荒川、赤石、聖、上河内、がきりがきりと氷雪の稜線を額を圧して投げかける。充実の極、空虚になって、わたしはあやうく帰るときを失おうとした。日は刻々氷雪の山を異なった角度から照らしだす、なかにもその焦点となるのはそのしょせん圏谷の雪だ。