Classici giapponesi con furigana
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たかせぶね
山椒大夫・高瀬舟他四篇
Leggi 山椒大夫・高瀬舟他四篇 (たかせぶね) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.395 caratteri · 40 schermate
それは名を喜助と言って、三十歳ばかりになる、住所不定の男である。もとより牢屋敷に呼び出されるような親類はないので、舟にもただ一人で乗った。
護送を命ぜられて、いっしょに舟に乗り込んだ同心羽田庄兵衛は、ただ喜助が弟殺しの罪人だということだけを聞いていた。さて牢屋敷から棧橋まで連れて来る間、この痩肉の、色の青白い喜助の様子を見るに、いかにも神妙に、いかにもおとなしく、自分をば公儀の役人として敬って、何事につけても逆らわぬようにしている。しかもそれが、罪人の間に往々見受けるような、温順を装って権勢に媚びる態度ではない。
庄兵衛は不思議に思った。そして舟に乗ってからも、単に役目の表で見張っているばかりでなく、絶えず喜助の挙動に、細かい注意をしていた。
その日は暮れ方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温かさが、両岸の土からも、川床の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜であった。下京の町を離れて、加茂川を横ぎったころからは、あたりがひっそりとして、ただ舳にさかれる水のささやきを聞くのみである。
夜舟で寝ることは、罪人にも許されているのに、喜助は横になろうともせず、雲の濃淡に従って、光の増したり減じたりする月を仰いで、黙っている。