Classici giapponesi con furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Leggi 島原心中 (しまばらしんじゅう) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.293 caratteri · 29 schermate
壁は京都の遊郭によくある黄色っぽい砂壁ですが、よく見ると、突き当りの壁には、口に含んで霧にでも吹いたように、血が一面に吹きかかっているのでした。
まだ、そうした場所に馴れなかった僕は、一目見ると、その悽惨な情景から、ぞっと水を浴びるような感じを受けましたが、立会いの警部や書記などの手前、努めて冷静を装いながら、まず女の傷口を見ました。見事に頸動脈を切ったとみえ、身体中の血潮がことごとくその傷口から迸ったように、胸から膝へかけて、汚れ切ったネルの寝衣をべとべとに浸した上、畳の上から廊下にかけ、一面に流れかかっているのでした。が、傷口を見ているときに、もっと僕の心を打つものは、その荒み果てた顔でした。もう確かに三十近い細面の顔ですが、その土のようにかさかさした青い皮膚や、目尻の赤く爛れた目などを見ていると、顔という気はどうしても起らないのです。人間だという気さえ起らないのです。ただ、名状しがたい浅ましさだけを、感じたのです。
死にそこなった男の方は、別室に移されていて、医者の手当を受けていたのです。僕が臨検した主な目的は、相手の男を尋問して、無理心中ではなかったか、また、たとえ合意の心中であったにしろ、男の方に自殺幇助の事実がなかったかを確かめるためだったのです。