Classici giapponesi con furigana
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がけしたのいけ
崖下の池
豊島 与志雄
Leggi 崖下の池 (がけしたのいけ) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.109 caratteri · 25 schermate
――焼夷弾が、ざざーっと降ってきた。至る所にぱっと閃光が起り、爆音が聞え、火焔が流れ、夜は蒼白くなり、次に赤くなり、そしてどの家も一斉に燃えだした。警防団員として警戒に当っていた増二郎は、もう警戒どころではなく、火のトンネルの中をくぐって、自家に辿りつくと、その辺には人影もない。無人の家々がただ燃えている。火の粉を含んだ煙が渦巻いている。それを突き切ると、右往左往してる群衆の中に出た。時子や雪子は見当らなかった。聞いても分らなかった。崖に穿たれた共同防空壕を覗いたが、そこにはもう誰もいない。増二郎は殆んど無我夢中で駆け廻った。そして幸にも、かなり遠くで時子を探し出した。時子はまるで痴呆のようだった。雪子を抱いて、全身ずぶ濡れになっていた。防空壕を出るとたんに、煙にまかれ、それから池の中につかっていた、とそれだけしか覚えていなかった。両腕のなかの雪子は、もう身動きもせず、息もしていなかった。そして二人は焼け残ってる寺に辿りつき、雪子の死体のそばで一日を過した。
「そのようなわけで、雪子がどこで息を引き取りましたのやら、時子にもさっぱり分らないのです。