Classici giapponesi con furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Leggi 嵐 (あらし) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.007 caratteri · 108 schermate
」
「とうさん、きょうは二日だよ。三月の二日だよ。」
それを聞いて、私は黒いメリンスを巻きつけた兵児帯の間から蝦蟇口を取り出した。その中にあった金を次郎に分け、ちょうどそこへ屋外からテニスの運動具をさげて帰って来た三郎にも分けた。
「へえ、末ちゃんにも月給。」
と、私は言って、茶の間の廊下の外で古い風琴を静かに鳴らしている娘のところへも分けに行った。その時、銀貨二つを風琴の上に載せた戻りがけに、私は次郎や三郎のほうを見て、半分串談の調子で、
「天麩羅の立食なんか、ごめんだぜ。」
「とうさん、そんな立食なんかするものか。そこは心得ているから安心しておいでよ。」と次郎は言った。
楽しい桃の節句の季節は来る、月給にはありつく、やがて新しい住居での新しい生活も始められる、その一日は子供らの心を浮き立たせた。末子も大きくなって、もう雛いじりでもあるまいというところから、茶の間の床には古い小さな雛と五人囃子なぞをしるしばかりに飾ってあった。それも子供らの母親がまだ達者な時代からの形見として残ったものばかりだった。私が自分の部屋に戻って障子の切り張りを済ますころには、茶の間のほうで子供らのさかんな笑い声が起こった。