Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

Leggi 左近の怒り (さこんのいかり) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 47.454 caratteri · 95 schermate

Aozora Bunko

用がすんだら、さっさとおかえり」

「待ってますから、至急やっていただいて下さい」

「校正なんぞいつごらんになるか分るかね。電話をかけて知らせるから取りにおいで。裏口から来るんだよ」

住田嘉久馬に会うどころの話じゃない。娑婆はことごとく勝手がちがう。再校がでるまでは用のない身体になったから、左近は大竜出版へひきあげることになり、印刷所で夕食を御馳走になって帰途についた。灯りの少い夜道を駅に向って歩いていると、後から若い女が追ってきて、いきなり彼の腕をとり、

「お久しぶりね、吉田さん」

「人ちがいですよ」

「黙って! お友だちのフリをして。おねがい」

「ボクは金を持たないよ」

「ね。おねがいですから、お友だちのフリをして。私、追われてるんです」

「キミはカンちがいしてるんだ。追われてるとすればボクだぜ。さては」

「ちがうッたら。私が追われてるのよ。ワケがあるのよ。ワケはあとでお話しするわ。おねがいだから、お友だちのフリをして。私のウチまで送ってちょうだい」

わけのわからぬことになった。ボスのコブンがぶん殴りにくるのに、こんな手のこんだことをするはずがない。してみると、この女にはたしかに左近に無関係の、深いワケがあるに相違ないが、人に追われるについては左近にも心当りが大有りだから、どうもまぎらわしくていけない。